近年、企業に求められている「DX」。データやデジタル技術を活用して生産性向上を図り、他社との差別化や競争に勝てるビジネスモデルや業務プロセスへ進化・変革することを指します。
「人事労務業務」にも同様にDX化の波は訪れています。では、人事労務業務へDXがもたらす変革とはどのようなものなのでしょうか?今回は「人事労務業務DX化」のポイントを徹底解説します。
「雇用したくても、人がいない…!」そんな悩みを抱える企業も多いのではないでしょうか?2025年に迎える超高齢化社会を前に、限られた人材リソースを最大限に活用し、成果を最大化する体制を整える必要があります。
今、人事労務業務には多くの課題が存在しています。例えば、手作業による煩雑な業務や情報の非効率な管理、データの重複入力などが挙げられます。
これらの課題は作業の効率を低下させ、生産性を低下させる原因となっています。また、人事労務業務の監査や報告書作成なども時間と労力を必要とするため、効率化の必要性が高まっています。
人事労務業務のDX化は、総務人事部門が職場環境の改善や人材戦略に集中できるよう支援し、従業員の成長に必要な意思決定を迅速に行えるようにします。
人事労務業務のDX化には、主に以下のような5つのメリットがあります。
人事労務業務の完全ペーパーレス化で従業員が行う業務をDX化し、手作業の削減や情報の効率的な管理が可能となり、業務時間を最大84%カットすることができます。
※OBC調べ 従業員100人規模、毎月1名中途入社があり、労務担当者1名、人件費時給1,800円の場合
紙媒体で労務を行う場合、紙やインク、保管場所の確保にコストがかかります。また労務に関する業務は紙書類が多く、システムを導入することでペーパーレス化を進めることができ、大幅なコストカットができます。多くの書類を紙で保存している企業ほど、コストカットの効果は大きくなります。
データの重複入力や煩雑な業務を自動化することで、作業効率が向上し、生産性を高めることができます。
DX化により、人的ミスや情報の漏れを防止することができます。正確な情報管理が可能となります。
DX化により、人事労務業務のデータを可視化することができます。これにより、優れた意思決定や戦略立案が可能となります。
一方、DXによってシステム利用料がかかり、これまでのやり方を刷新するために教育コストもかかってきます。しかし、これまでかかってきた人件費や物理的コストが大幅カットされますので、削減できるコストが上回る場合は、積極的に導入を検討すると良いでしょう。
多くのメリットがあることは上記のとおりですが、人事労務業務は紙の書類が多いことからペーパーレス化が難しい業務とも言われています。しかし、本当に紙書類の量だけが問題なのでしょうか。以下のようなデータが出ています。
※出典:OBC調査「人事労務のペーパーレス化実態調査アンケート」
担当者が「ペーパーレス化の取り組みに際して課題に感じていること」の上位には、紙資料が多いこと以上に「金銭的・人的コスト面」が集中していました。また「実施に必要なもの」では、人事労務の担当者が自身で対応できない範疇のものが上位を占めていました。
人事や労務などの総務部門は深刻な人手不足状態でもあります。多くの企業が「ひとり総務」や担当者と上司だけの「ふたり総務」で負荷の多い業務を行っていると言われています。こういったリソース不足の中、DX化のための情報収集や社員全員にシステム教育をするとなると、現場が対応できないと感じるのも仕方ないのかもしれません。
これらの課題をクリアできるように人事労務のDX化を進めるには、どのような手順を踏むのがいいのでしょうか。
DX化の手順として、まず「一部からスタートし、段階的に広げる方法」と「網羅的に始める方法」とがあります。一般的に、一部から着実に…とやりがちですが、効果が現れるまでどうしても時間がかかってしまい、時流に乗り遅れ企業競争力へ影響が広がるリスクもあります。
近年では、網羅的に始める方法に注目が集まっています。しかしながら、網羅的に取り組むにはルールの整備や社内の協力が必須です。
▼人事労務業務のDX化推進優先度
従業員の負荷が少ない業務を中心に検討していくと良いでしょう。例えば、まずは従業員が関係しない「社会保険申請」。他にも頻度が少ない「給与明細配付」「年末調整申告」「勤怠管理」などは、取り組みやすいでしょう。
業務範囲が決まったあとは、次はITツール(システム)の選択です。自社の理想とする運用に近いものであることが重要です。
例えば、社会保険申請業務をペーパーレスにしようとしても、健康保険組合に加入している場合はマイナポータル申請API連携に対応しているシステムでないと電子申請ができません。
また、せっかく導入しても、使い方がわからないや使いづらいなどを理由に従業員が利用してくれない場合は、導入が進みません。例えば、給与明細配付システムの場合、従業員がWeb情報にログインしなければ確認できないというものも多く、Webシステムになれていない方には使いづらいと感じるポイントになるでしょう。
担当者にも従業員にも、簡単に扱えるITツール(システム)を検討するようにしましょう。
特に経営者側の同意を得るには、コストに関する負担を明確化し、費用対効果を示す必要があります。上に記載している業務時間の削減効果や、実際にかかる金銭的コスト(人件費・紙や印刷代などの費用など)の削減効果などは数値化しやすいと思います。必要性を感じてもらうためには、具体的な数値で示すことがかなり重要です。
一般的なコスト削減のみならず、自社のケースで費用対効果を算出しましょう。ベンダーに相談し、実際の業務で費用対効果を試算してもらうのが最も早く最適な方法と言えるでしょう。
今回は、人事労務業務のDX化についてメリットや課題、導入のステップをご紹介しました。以上のことを参考にして、ぜひ積極的にDX化を進め、本来取り組むべき業務に尽力し、企業の競争力を強化させていってください!