BiZUNA BLOG - ビジネスに絆を生む情報を配信

「EDRって何?」今さら聞けないエンドポイントセキュリティについて

作成者: ブロガー1|2025年7月10日

サイバー攻撃が高度化するなかで注目されるEDR(Endpoint Detection and Response)とは何か?従来のウイルス対策ソフトとの違い、導入のメリット、企業がとるべき対策までをわかりやすく解説します。

1. セキュリティは「侵入を防ぐ」時代から「侵入後を守る」時代へ

近年のサイバー攻撃は、単なるウイルスやマルウェアにとどまらず、標的型攻撃や内部不正など、従来の「侵入を防ぐ」対策だけでは限界がある時代に突入しています。
企業にとっては「100%防ぐ」ことは現実的ではなく、「万が一侵入された後、いかに早く検知し、被害を最小限に抑えるか」が重要な課題となっています。そこで注目されているのがEDRというソリューションです。

2. EDRとは? – 定義と機能の概要

EDR(Endpoint Detection and Response)とは、「エンドポイント(PCやスマホ、サーバーなど)における脅威の検知・対応を目的としたセキュリティ技術」です。

主に以下の2つの役割を担います。

  • Detection(検知):不審な挙動やマルウェアをリアルタイムで検出
  • Response(対応):問題の切り分け、隔離、調査など迅速な対応を支援

従来の「入口対策」だけでは守れないリスクに備え、エンドポイントの内部で何が起こっているかを可視化し、対処できるのがEDRの強みです。

3. 従来のアンチウイルスとの違い

項目 従来のアンチウイルス EDR
主な目的 ウイルスの検知と駆除  挙動の監視と対応支援 
対応範囲 既知のマルウェア中心 未知・高度な脅威まで対応
対応タイミング 攻撃前(予防) 攻撃後(検知・対応)
可視化・調査機能 限定的 高度なログ管理・分析が可能
対応方法 自動駆除中心 遠隔操作・封じ込めなど柔軟対応

4. EDRが必要とされる3つの理由

サイバー攻撃の手口が高度化・多様化する現代において、従来のウイルス対策ソフトだけでは守り切れないケースが増えています。

1)  標的型攻撃・ゼロデイ攻撃の増加  

サイバー攻撃は日々進化しており、ウイルス定義ファイルに登録されていない“未知の攻撃”が主流となっています。EDRはこうした既存の対策をすり抜ける攻撃に対しても、挙動を監視することで検知・対応が可能です。

2)  テレワーク・クラウド時代の到来  

社外からのアクセスや多様な端末利用が一般化したことで、従来の社内ネットワーク中心の防御だけでは不十分になりました。EDRは、「どこにいても端末の挙動を監視・制御」することができ、分散した働き方に対応します。

3)  サイバー攻撃の巧妙化

攻撃者は一度侵入すると、しばらく潜伏して情報を盗み取るなど、気づかれにくい手法を取ります。EDRは「端末内の動作ログを記録・分析することで、異変に早期に気づき、被害の拡大を防ぐ」役割を担います。

5. EDR未導入によるインシデント事例

事例1:某製造業(国内)

2021年、某大手製造業がランサムウェアに感染。EDR未導入で初動対応が遅れた結果、工場の操業が数日間停止。
被害額は数十億円規模に。後の調査で、1台の端末から社内ネットワーク全体に感染が拡大したことが判明。

事例2:某中小企業(地方サービス業)

アンチウイルスは導入済みだったが、未知のマルウェアが侵入し、顧客情報が外部に送信されていた。
EDRがあれば、異常通信や不審な挙動のログが残り、拡大前に対処可能だったとされる。最終的に社名公表と信頼失墜に至った。

事例3:テレワーク中の情報漏洩

ある企業では在宅勤務の社員が使っていた私物PCから不審なアクセスが発生。
社内ネットワークへの侵入が確認されたが、EDRがなかったためアクセス履歴や感染経路の特定が困難だった。結果として、調査と対応に2ヶ月以上を要した。


6. EDRの主な機能と活用イメージ

  • リアルタイム監視:端末の動作を常時監視し、不審な動きがあれば通知  
  • インシデント対応支援:感染が疑われる端末をリモートで隔離  
  • フォレンジック分析:過去の操作ログをさかのぼって調査・分析  
  • 脅威ハンティング:潜在的なリスクを人手で見つけ出す仕組みの支援
例:ある端末で不審なプロセスが実行された際、EDRが即座に検知。管理者はその端末を隔離し、感染拡大を防止。ログから原因を突き止め、同様の攻撃が他端末で発生していないかを確認。

7. 導入のポイントと注意点

  • 自社の体制と合った製品を選ぶ:全自動化タイプか、調査主体の運用タイプか  
  • 人材と運用体制の整備:EDRは“使いこなす”体制が不可欠  
  • セキュリティポリシーとの整合性:ログ取得やリモート操作など、社内規定との整合性を確認

また、EDRは単体で完結するツールではなく、**SIEMやSOCとの連携**、さらに**XDR(Extended Detection and Response)**への拡張も視野に入れると、より強固な対策が可能になります。

【SIEM(Security Information and Event Management)とは】  

ネットワーク・サーバー・アプリケーション・エンドポイントなどから収集した**ログやイベント情報を統合的に管理・分析するシステム**。EDRの検知情報をSIEMに取り込むことで、より広範囲な脅威分析や相関分析が可能になる。

【SOC(Security Operation Center)とは】  

企業や組織内の情報セキュリティを**24時間体制で監視・分析・対応する専門チームまたは拠点**。EDRやSIEMからのアラートをもとに、**リアルタイムでの脅威の対応・封じ込め・調査支援**を行う。

【XDR(Extended Detection and Response)とは】  

EDRをさらに拡張し、**エンドポイントだけでなく、メール、クラウド、ネットワーク、サーバーなど複数のセキュリティ領域を統合的に監視・対応するセキュリティプラットフォーム**。XDRによりサイロ化された情報を横断的に分析し、脅威の全体像を可視化・迅速な対処が可能になる。

これらの連携により、「EDRが検知」「SIEMで分析」「SOCが対応」「XDRで全体最適化」といった**多層的・統合的なセキュリティ体制**を築くことができます。

8. まとめ – これからのエンドポイント対策

ウイルス対策だけでは守りきれない現代、EDRは「起きてからでも被害を最小限に抑える」最後の砦です。
被害を防ぐためには、EDRを導入するだけでなく、日々のログ監視、迅速な初動対応、そして継続的な改善が求められます。

もし、「EDRって気になっているけど難しそう…」と感じている方は、まずは自社のエンドポイント環境とセキュリティ体制を棚卸しするところから始めてみてはいかがでしょうか?

スパークジャパンでは、セキュリティ対策等におけるご相談も承っています。