日本では1995年を境に生産年齢人口(15〜64歳)が減少に転じ、労働市場は構造的な人手不足に陥っています。特に地方や中小企業においては、採用したくても「そもそも応募がない」「地元に若者がいない」という状態が続いています。
新卒一括採用・年功序列・終身雇用といった旧来の就業モデルは、現代の若年層にとって魅力を感じにくいものとなっています。安定よりも「自己実現」や「自由度」を求める価値観の多様化が進み、企業側の受け入れ体制が追いついていないのが実情です。
人は余っているようで、企業が必要とするスキルを持つ人材がいない。IT・介護・建設など一部の業界では慢性的に人手不足が続いており、採用コストだけでなく「育成負荷」が企業にのしかかっています。
人材が足りないと、ひとりひとりの業務量が増加し、結果としてミスや遅延が発生。現場が回らなくなるだけでなく、納期遅延・品質低下が顧客満足度を下げ、売上にも直結します。
「仕事が多すぎる」「育成してもすぐ辞める」という声が中堅社員に広がり、精神的負荷の蓄積からベテランの離職が加速。これによりさらに現場は不安定になります。
新規事業・新規拠点などの「攻めの戦略」を採りたくても、人材リソースの問題から断念せざるを得ないケースが増加。採用にかかる時間と費用が、新たな挑戦の障害となっています。
給与だけでなく、「誰と働くか」「どんな風に働くか」「成長できるか」などの要素が求職者には重視されています。にもかかわらず、求人票に「仕事内容」や「社風」が見えていないケースが多く、応募につながっていません。
実際には、クラウド型の業務支援ツールや低価格のサブスク型ITサービスが充実しています。「自社に合ったスモールスタート」が可能な時代であり、ITのハードルは大きく下がっています。
限られた人材で業務を回すためには、徹底した業務見直しと、業務分担の再設計が求められます。結果として、“誰が辞めても困らない仕組み”が企業力になります。
企業が人材不足に立ち向かうためには、「人を増やす」だけでなく「仕組みで人を補う」必要があります。属人的な業務やアナログな作業を続けていては、今後さらに競争力を失っていきます。
そのためには、次の3つの視点で「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」を進めることが不可欠です。
人がいなくても回る仕組みを作るために、ツールや仕組みの見直しを行う。
採用活動・教育体制・社内コミュニケーションを可視化・効率化する。
時代に合った働き方や環境を提供できる企業は、求職者・顧客・社員すべてから選ばれる存在になる。
人が足りない今こそ、「人に頼らない仕組みづくり」に舵を切るべきです。DXは企業のコストではなく、未来への投資です。