コンテンツまでスキップ

BiZUNA

2025年(令和7年)1月より、健康診断データの電子申請が義務化されます

定期健康診断結果報告書は、従業員が常時50人以上いる事業所が労働基準監督署に提出しなければならない義務があります。また、健康診断の結果を基に作成された健康診断個人票は、5年間保存する必要があります。
社員数が多い企業では、紙での診断結果の保存に苦労している担当者も多いのではないでしょうか。2025年には健康診断の結果報告が電子申請で義務化されることもあり、今後ますますデータによる管理の重要性が増してくるでしょう。

改正の経緯

労働安全衛生関係法令においては、労働者の被災状況や健康状態、事業者の対応措置の実施状況などを行政が適切に把握できるよう、事業者に対してさまざまな報告義務が課されています。これらの報告は電子申請による提出が可能とされていますが、依然として書面での報告が多くを占めているのが現状です。

統計の集計作業の効率化や報告内容の誤記や記入漏れの防止、また行政業務の効率化を実現するため、電子申請のさらなる推進が求められてきました。その結果として、報告件数の多い労働安全衛生関係の一部の報告について、2025年(令和7年)1月以降、電子申請が義務化されることとなりました。

令和7年1月1日より電子申請による提出が義務づけられる報告書

現在、労働安全衛生に関する報告書は、所轄の労働基準監督署に来署、郵送、または電子申請によって提出されていますが、令和7年1月1日からは以下の報告書について電子申請が原則として義務化されます。

  • 労働者の死傷病報告
  • 総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医の選任報告
  • 定期健康診断結果報告 心理的負担の程度を把握するための検査結果等の報告
  • 有害業務に関する歯科健康診断結果報告
  • 有機溶剤等の健康診断結果報告
  • じん肺健康管理実施状況報告

健康診断に関する事業者の義務範囲

雇入れ時健康診断や定期健康診断は、労働安全衛生規則第66条によって企業に実施が義務づけられています。対象となる従業員は正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイトでも一定の条件を満たせば健康診断を受けさせなければなりません。

また、雇入れ時の健康診断は入社時に、定期健康診断は年1回実施することになっており、実施する検査項目も定められています。

雇入れ時の健康診断(安衛則第43条) 定期健康診断(安衛則第44条)
  1. 既往歴及び業務歴の調査
  2. 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  3. 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
  4. 胸部エックス線検査
  5. 血圧の測定
  6. 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
  7. 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)
  8. 血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
  9. 血糖検査
  10. 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
  11. 心電図検査
  1. 既往歴及び業務歴の調査
  2. 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  3. 身長(※2)、体重、腹囲(※2)、視力及び聴力の検査
  4. 胸部エックス線検査(※2)及び喀痰検査(※2)
  5. 血圧の測定
  6. 貧血検査(血色素量及び赤血球数)(※2)
  7. 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)(※2)
  8. 血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロール、血清トリグリセライド)(※2)
  9. 血糖検査(※2)
  10. 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
  11. 心電図検査(※2)

(※2)は、年齢や医師の判断により、省略が可能
出典:厚生労働省 PDF「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう

健康診断後には、企業には以下の義務があります

  • 健康診断の結果を、すべての受診者に通知すること。
  • 診断結果に基づいて作成した「健康診断個人票」を5年間保存すること。
  • 結果を速やかに所轄の労働基準監督署に報告すること(ただし、常時使用する労働者が50人以上いる事業場のみが対象です。50人未満の支店や営業所は報告義務はありませんが、健康診断の実施自体は義務です)。

報告義務に違反すると罰則を受ける可能性があるため、特に注意が必要です。

また、健康診断の結果、二次検査が必要とされた場合、その受診は本人の判断に任されています。そのため、二次検査の結果については企業に保存義務はありませんが、社員の健康管理は労働契約法に基づき企業の責任とされるため、二次検査が必要な従業員に対しては受診を促し、結果を管理することが望ましいといえます。

さらに、個人情報保護法により、健康診断結果や病歴、身体障害などは「要配慮個人情報」として扱われます。そのため、これらの情報を取得したり第三者に提供したりする場合には、あらかじめ本人の同意を得ることが必要です。特に、法定項目以外の追加の健康診断や検査を行った場合には、その結果を保存する際に本人の同意を得ることに注意が必要です。

健康診断結果は、データ保存が基本になる

健康診断結果の保存方法は、これまでは紙で管理することが一般的でしたが、近年ではデータ化が進んでいます。この背景には、政府が進める「コラボヘルス」の取り組みがあります。コラボヘルスとは、労働者、事業者、健康診断を行う機関、そして保険者が連携して、健康診断の結果を共有し、労働者の健康維持と向上を目指しながら、企業の生産性向上、経営改善、そして社会全体の経済成長を目指す取り組みです。

この取り組みの一環として、厚生労働省は健康・医療・介護分野でのデータ活用を推進する「データヘルス改革」を進めています。2023年からは、マイナンバーと連携させたシステムが導入され、健康診断の結果が電子データとしていつでも確認できるようになりました。このシステムにより、健康保険の指導者や医師、そして本人自身が、過去の健康診断結果を簡単に確認できるようになっています。

また、この仕組みにより、居住地を変えたり、新しい保険組合に加入した場合でも、診断データの引継ぎがスムーズに行えます。その結果、転職や引っ越しなどのライフイベントがあっても、健康診断のデータが途切れることなく管理され、時間や場所を問わず、過去のデータをもとにした健康指導や診療が可能になります。これにより、より適切な医療や健康指導を受けることができ、個人の健康管理に役立つと同時に、企業側も従業員の健康状態を把握しやすくなり、働きやすい環境づくりに貢献できるようになっています。

 

information_img_03
出典:厚生労働省 「40歳未満の事業主健診情報の活用に関する広報サイト

2025年1月から一部の労働安全衛生関係の手続きに対して電子申請が義務化されることになり、定期健康診断の結果報告およびストレスチェックの結果等報告も原則、電子申請になります。

業務担当者の視点から見た健康診断結果のデータ管理のメリット

健康診断結果をデータで管理することには、以下のような利点があります。

 管理業務の効率化

従来、健康診断結果を紙で管理している場合、従業員への配付やファイリング、コピーなどの保存作業が非常に手間がかかります。例えば、ある大手製造業では、5年間の保存義務のある健診結果をファイルで管理していましたが、数百人規模の従業員数になると、保管場所の確保が難しく、毎年新たなファイルが増えるたびに保管棚が足りなくなるという問題がありました。また、産業医との面談時に過去の健診結果を確認する際には、紙の記録を探し出すだけで多くの時間がかかっていました。

しかし、データ管理を導入したことで、健診結果を必要に応じてすぐに検索できるようになり、これらの手間がなくなりました。結果として、管理業務の効率が大幅に向上し、担当者の負担が軽減されたとのことです。

紛失・流出リスクの低減

健康診断結果には、要配慮個人情報が含まれており、その取扱いには慎重さが求められます。ある金融機関では、紙の記録を保管していた際、ファイルの一部が誤って他の部署に持ち出され、情報管理上のリスクが発生した事例があります。

データ管理を導入した後は、アクセス制限を設け、情報へのアクセスを必要な担当者に限定することができました。さらに、専用の管理システムを用いることで、情報が外部に流出するリスクを最小限に抑えることができ、情報管理の信頼性も向上しました。この結果、安心して業務を進める環境が整いました。

健康促進や健康経営の推進

健康診断結果をデータで管理することで、従業員の健康管理を支援する様々な取り組みが可能になります。例えば、IT企業の一例では、システムを導入して健康診断データを一元管理することで、定期健診をまだ受けていない従業員を自動的にリストアップし、早めに受診を促す通知を送る仕組みを作りました。

また、データが蓄積されることで、従業員の健康状態の経年変化を見える化することができ、健康リスクが高まっている従業員に対して早期にフォローアップができるようになりました。このデータに基づくアプローチにより、企業全体の健康意識が向上し、産業医との連携もスムーズに進められています。

さらに、別の製造業では、部署ごとの健康診断データを分析し、ストレスチェックやメンタルケアの必要性が高い部署を特定して、予防対策を実施することで、社員の健康維持と生産性向上に役立てています。こうした取り組みは、健康経営の一環として社内外からも高く評価されています。

このように、健康診断結果のデータ管理を行うことで、企業は業務の効率化やリスク管理に加え、従業員の健康支援を通じた働きやすい環境づくりにも貢献できるようになります。

DXについてのお問い合わせ

DX・業務改善のお問い合わせ